多くの人がストレスを自分に悪いものなど捉えています。
「ストレスは自分の体の健康を阻害してしまう要因だ」
「ストレスのない生活がベストだ」
そう考えてしまうのも無理はありません。
私たちは普段の生活からストレスは害であるとずっと認識させられてきたのです。
ですが、ストレスは生きる上でとても重要なものです。
むしろ自分のパフォーマンスを向上させるために必要不可欠なものです。
本日はそんなストレスについての実験をご紹介します。
こちらの本から引用します。
ニューヨーク州立大学バッファロー校の心理学者マーク・D・シーリーの研究です。
シーリーの研究で最も有名なのが2010年に発表された「どんな試練も乗り越える」というものです。
シーリーは逆境が及ぼす長期的な影響を調べました。
実験参加者たちの過去に経験したトラウマの数と、その後の健康状態の予測について注目したのです。
すると、実際にあまり逆境を経験したことない人たちは、ある程度の辛い経験をしてきた人たちよりも幸福度が低く健康状態も劣っていたそうです。
また、逆境を経験した数が0の人たちは人生に対する満足度もはるかに低かったそうです。
つまり、ある程度の逆境は人生に対する満足度や幸福度、健康状態をプラスにしてくれる働きがあるということです。
ですが、上記のシーリーの論文はある人には怒りを買うような内容でした。
なぜなら、虐待などのトラウマ経験者であってもその逆境に感謝しろといってるようなものだからです。
ですが、もちろんシーリーは心理的外傷体験を肯定してるわけではありません。
ただ、シンプルに「人生において逆境というものが、どのような役割を果たすのか」というものを解き明かそうとしていただけなのです。
つまり、メッセージはこうです。
過酷な体験をしたときに私たちはどのように考えるのが1番なのか?
それは、「人は逆境で潰される運命にあるわけではない」と考えることです。
どれだけひどい人生で人生がめちゃくちゃだと考えてしまう出来事でも、それで人生が潰される運命ではないということです。
面白い実験があります。
2010年の論文で様々な物議を醸し出したシーリーは実験をすることにしました。
プラスチックの中に入った1℃の水に手を突っ込みどれくらい耐えられるのか?という実験です。
参加者たちの過去の逆境の具合によって耐えられる時間帯に変化があるのかを調べたのです。
人間の細胞組織は10℃で凍り始めるそうです。
水温が5℃以下の場合は皮膚が火傷したような感覚を覚えます。
これで1℃がどの程度の冷たさがわかったと思います。
その水になるべく長く手を突っ込み、水の底にあるXという文字を擦り続けなければなりません。
さて、参加者の方は一体どれくらい長く痛みに耐えられるのでしょうか?
結果は面白いことになりました。
過去に逆境をほとんど経験したことのない人たちは、手を早く引き上げたそうです。
つまり痛みに我慢することができないのです。
耐性がないのです。
ですが、過去に強い逆境を経験した人たちは、長く持ちこたえていたそうです。
逆境は困難に屈しない力を育ませてくれるというわけです。
他にも慢性的な腰痛を抱えている人でも、過去に逆境の経験が多くある人は鎮痛剤に頼ることも少なく病院に通う回数も少ないそうです。
多くの逆境を経験した人は困難にへこたれない精神が培われていっているわけです。
人生ストレスは切っても切り離せない関係です。
ストレスが自分にとって悪影響であると考えてしまえばその通りにもちろんあるでしょう。
ですが、上記の実験のように逆境を多く経験した人たちは、人生で起こり得る困難にある程度の耐性がつき力強く生きていくことができる可能性があるということがわかりました。
これは1つの捉え方の話です。
ストレスを自分を奮い立たせる糧にするのか?
あるいは自滅させる要因として捉えるのか?
このような選択肢はあるということがわかっただけでも大きな可能性が広がります。
ぜひ日常で活用してみてください。